【解説】会社を買って、起業する。超低リスクで軌道に乗せる「個人M&A」入門 後編
こんにちは。
今回は五味田さんの書かれた「会社を買って、起業する。超低リスクで軌道に乗せる「個人M&A」入門」の後編記事になります。
トピックは下記になります。
▪️「承継者のいない会社」を探す方法
▪️「素人感覚」で会社を買うかどうか判断する
▪️「決算書の数字」で冷徹に判断する
▪️株式購入の3ステップと購入資金の作り方
▪️会社を買った後の経営者としての選択肢
▪️「承継者のいない会社」を探す方法
前回の記事で承継者のいない会社をなぜ選ぶのかについて解説しました。
そしてその具体的な探し方は次の順番で探すといいでしょう
①親戚に聞く
②旧知の社長に聞く
③税理士に聞く
④勤めている会社の承継の可能性を探る
⑤常連客として通う店の承継の可能性を探る
⑥国・地方公共団体から紹介してもらう
⑦M&Aマッチングサイトで探す
⑧M&A仲介会社に依頼する
この順番には以前よりご説明している「信頼関係」が影響しています。
経営者はできれば親族に継いで欲しいと思っており、それが無理でも自分の意思を継ぐ人に渡したいと考えています。
なのでまずは自分の身の回りから承継の可能性を探りましょう。
▪️「素人感覚」で会社を買うかどうか判断する
そして買いたい会社の候補を絞り込んだら、次にその会社を購入するかしないかを、さまざまな視点でチェックします。
まず最初のチェックは素人目線でその会社が提供している商品・サービスに魅力があるかどうかです。
企業ホームページや宣伝・広告などを見て、商品・サービスを買ってみたい、使ってみたいと思えるかどうかを確認します。
又、実際に買ってみて顧客として満足度が高く、また利用したいと思えるかをチェックします。
次にチェックすべきは、この会社で働いてみたいと思えるかどうかです。
そこで働く人たちの表情や態度をチェックし、会社の雰囲気を見ていきます。
そこからわかるのは、その会社の「組織力」や「組織風土」です。
いかに働きやすい組織が作られているかというのは適切な「報酬・環境」「人事評価制度」「教育制度」が整備されており、従業員にとってやりがいを感じられる組織というわけです。
又、求人広告の頻度でその会社の離職率が分かったりもします。
もう1つ、本当に買う価値のある会社かを見極める方法として、その経営者と何回か食事に行きましょう。
食事をしながら仲良くなる、は結婚も会社売買も同じです。
相手との信頼関係を築く上でも良い方法と言えます。
その際に気にしておきたいポイントは下記です。
①相手の生い立ちや事業経緯
②思考の癖
③税金・借入に対する考え方
④経営に関わるキーパーソン
⑤会社の譲り方や売買金額に関する希望
⑥会社を売った後の希望の関わり方
⑦自分が会社を買った際の現社長のメリット
1回の食事ですべてを確認することは難しいので、何回か食事を重ねながら確認していきましょう。
▪️「決算書の数字」で冷徹に判断する
素人感覚で会社を買うかどうかを判断したら、次はシビアに数字で精査する段階に入ります。
ここで注目すべきは会社の財政状況です。
「どのような事業でどれだけ売上があるのか?」
「利益がいくら出て、お金の使い方に何か問題はないのか?」
などを決算書の数字をもとに細かく確認していきましょう。
確認しておくべき書類は以下です。
・決算書
・仕訳日記帳
・個別採算表
・特許権
・商標権
・株主名簿
本書ではその言葉の意味から、その読み解き方まで丁寧に解説しております。
是非それぞれを詳しく理解したい方は本書を手に取って貰えればと思います。
▪️株式購入の3ステップと購入資金の作り方
会社購入の最終ステップである会社購入の方法と購入資金の作り方を解説します。
まず前提として、会社を買う=会社の株式を買うということを頭に入れておきましょう
その上で、本書では超友好的に買うために今まで信頼関係を築いてきました。
通常のM&Aでは売買価格は相場観に左右されますが、超友好的なら購入では相場は関係ありません。
したがって、こちらの希望購入価格を正直に話して、相手の販売希望額と擦り合わせるのが基本です。
ちなみにM&Aにおける会社売却の相場価格は、
「純資産+(営業利益+役員報酬)×2~5年」
という計算式で算出するのが一般的です。
(これは知らなかったのでかなり勉強になりました)
株式の売買価格が決まったらまずは購入予定の会社の役員になって仕事で成果を出しつつ、他の役員や社員との信頼関係を築きながら、徐々に株式を買っていく方法を本書では勧めています。
ステップ1:株式の一部を買って株主として経営参画する
ステップ2:株式の過半数を買って、会社の舵取りを任せてもらう
ステップ3:残りの株式を買って、現経営陣に引退してもらう
このように企業の経営陣が既存株主から株式を購入することを「MBO(マネジメント・バイアウト)」といいます。
株式は持ち株比率で「何ができるか」が変わります。
●持ち株比率が1%以上:株主総会における議案請求権
●持ち株比率が3%以上:株主総会の招集請求権、会計帳簿の閲覧請求権
●持ち株比率が33.4%以上:株主総会の特別決議を単独で否決する権利
●持ち株比率が50%以上:株主総会の普通決議を単独で可決する権限
●持ち株比率が66.7%:株主総会の特別決議を単独で可決する権限
会社購入では余計なトラブルを回避するためにも、持ち株比率と株主の権利について熟知しておきましょう。
そして、まずは役員として会社に入ってから株式讓渡することは、少ない自己資金で買うことが出来るメリットにもなります。
次に購入資金の作り方について解説します。
①LBO(レバレッジド・バイアウト)を活用
LBOとはM&A手法の1つで、「購入対象企業の資産や将来のキャッシュフローを担保にして、金融機関などから購入資金を融資してもらう」方法です。
ここで先程お話したいったん役員になってから株式を買っていく方法(MBO)が生きてきます。
つまり、いったん役員になってしまえば、その会社を担保にして金融機関などから購入資金に充てるお金を融資してもらうことができるのです。
このLBOやMBOの仕組みを使えば、自己資金がなくとも、融資によってある程度大きな規模の会社でも購入できる資金を作ることができます。
②役員報酬を購入資金に充当することは王道
次にその会社の役員になり、役員報酬を会社購入資金として充当する手段があります。
この場合、使い道は2パターンあります。
1、現経営者が退職しない場合は、役員報酬・賞与を「株式購入資金に充てる」
2、現経営者が退職する場合は、役員報酬・賞与を「現経営者の役員退職金に充てる」
のが得策とされています。
最初に役員になった段階で担当した事業で成果を出せば、周囲からの信頼も得られ、同時に会社購入資金も確保出来ます。
購入前に役員になっておくことは、まさに一石二鳥の会社購入なのです。
▪️会社を買った後の経営者としての選択肢
会社購入は買った後どのように経営するかが重要です。
会社購入後の選択肢は大きく次の3つに分かれます。
①利益を増やして「役員報酬の増額」
②会社の価値を上げたあと、「売却」して利益獲得
③会社を「上場」させて事業拡大を目指す
多くの方が①を目指すかと思われますが、注意が必要なことは、税金などの面から見ても、役員報酬を増やしすぎると、その分「所得税」や「住民税」「社会保険料」が高くなります。
②の売却を考えているのであれば購入前の段階で現経営者に伝えておくのがベターです。
超友好的M&Aでは相手とまるで親族のような信頼関係を築くことを目指して承継しているので、引き継ぎ後に売却をすることを伝えるとトラブルの原因になります。
③の上場を目指すことはあまりオススメできません。
そもそもメリットデメリットを考えた時により多くのリターンを得るのなら②売却の方が良いからです。
簡単にメリットデメリットを見ていきましょう
【メリット】
●社会的信用や知名度が高まるので、資金調達しやすく、優秀な人材が集まりやすくなる
●株式を市場で売却することで、創業者の利益が上がる
●上場の為の審査をクリアするために、社内環境の改善、経営体制の見直し&再構築ができる
●まとまった資金が必要な時、保有株式を売却してすぐに現金化できる
【デメリット】
●上場の為の準備に、膨大な時間とお金がかかる
●上場後も、多額の上場維持コストがかかる
●多くの株主が経営に関与してくるので、上場前より経営方針の決定スピード、自由度が下がる
●今まで以上に社会的責任が問われるので、管理体制の強化が必要
●他者に経営権を奪われる、買収されるリスクが発生する
そこまでして上場し、会社を大きくしてどんどん新しい事業にチャレンジしていきたいという覚悟が必要です。
以上が本書の解説になります。
会社購入は、あなたの実力次第で価値が上がりも下がりもする堅実な投資です。
承継者問題で困っている会社を超友好的に安く買って、うまく経営する。
そして利益と会社の価値を上げ、経営者として役員報酬を増やすべく頑張るか、会社を売却して多いな利益を獲得するかはあなた次第です。
あなた自身のために、また救世主を求めている経営者とその会社で働く人々のために、そして社会のために、本書を参考に、会社購入に積極的に挑戦してみて下さい。